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インフォメーション

2013

07/26

理事長コラム②

応援メッセージ

―まず、「フードバンク」について簡単に説明を―

「食料銀行」を意味する社会福祉活動で企業や量販店、農家、個人から賞味期限内でまだ食べられるのに商品として流通できなくなった食品の寄贈を無償で受け、食べ物に困っている人や施設などに無償で提供する活動で、食を通した社会貢献ですね。

なお、活動基準として「フードバンクガイドライン」が2010年に策定され、全国で11の団体が加盟している。ガイドラインには「トラブルが発生した場合の責任の所在の明確化」、「食品の転売の防止」、「食品の品質の保持」等、17の遵守事項が謳われている。

―日本ではあまり知られていない活動ですが―

東京のフードバンクの活動などを学ぶと日本と外資系企業の違いみたいなものが垣間見られる。やはり、日本企業は、「困っている人たちへ食品を提供する」という、いわば「奉仕の精神」からという考え方が非常に強いように思われる。

しかし、外資系の企業の考え方はどうも違うように思える。もっとドライな考え方といった方が良いのか?「してあげる。してもらう」という考え方を排した関係を望んでいるように感じられる。

―「MOTTAINAI(もったいない)」は一昨年、亡くなったアフリカのノーベル平和賞受賞のマータイさんが世界に紹介した「日本的美徳」だが―

つまり、自分たちが製造し、出荷の段階で破損したり、何らかの理由で販売できなくなった商品が、もう一度日の目を見ることはできないのか。「何か活用の方法はないのか」「食べる分には不都合はないのに、商品として販売できないとは……」といった生産者の廃棄したくないとの思いが、「じゃあ、食べ物を必要としている人に無償で届けよう」と始まったのが「フードバンク」活動ではないかと思っている。

「かわいそうな境遇にある人たちへ食品を」という奉仕の考え方ではなく、製造したものが廃棄されることなく最後まで無駄を最小限に止める方法の一つとして登場した考え方だと強調したい。それこそ、「MOTTAINAI」だと言えるのでは?

―この活動に関わろうと思った動機、これからの夢は―

フードバンク活動に取り組もうとした動機やきっかけとはいかなるものであったのか。また、社会的起業は人権活動にとって、どんな役割を担うものであるのか、明らかにする必要があるだろう。

まず第1には、金儲け優先の企業ではなく、地域や社会への再投資という考え方を取り入れようとする試みであるという点である。差別や排除、忌避といった社会の現実に対して、公が解決しなければならない課題と、地域側からの行動、仕掛けが必要となってきており、そこを担うのが社会的起業といえる。雇用をつくりだし、地域を元気にする市民側からの提案がフードバンクの活動である。

第2に、ミッション(任務、使命)が社会的であるかどうかという点にある。利益追求ではなく、人のためになる活動かどうか、困難を抱えた人を積極的に雇用しようとしているかがポイントである。貧困、孤立といった社会的に排除された人々が社会で受け入れられる仕組みを社会的起業で担おうという活動である。

第3は、最近関心が高まってきている「セルフ・ネグレクト(自己放任)」という状態に陥っている人々に救いの手をさしのべる活動として、フードバンクを提唱したという点である。セルフ・ネグレクトとは、成人が通常の生活を維持するために必要な行為を行う意欲・能力を喪失し、自己の健康・安全を損なうことであり、ひどい場合は、必要な食事をとらず、医療を拒否し、不衛生な環境で生活を続け、家族や周囲から孤立し、孤独死に至る場合があると言われている。

意欲がない、社会に参加しようとしない、人との関わりを拒絶してしまうなど、メンタル不調は近年増加の一途にある。行政だけにその解決をゆだねても限界があり、地域社会全体による見守りやフードバンク活動のような取り組みで、乗り切っていかなければならない課題である。

つまり、差別の現れ方が多元化してきている現代にあって、従来の運動スタイルではこの困難を切り拓いていくことは出来ないという問題意識からスタートし、そのためには社会的起業を興すという発想が育まれてきたのであり、目標は、自らで「雇用を創る」ということであり、その活動を通じて人権や環境という社会活動につながって行くということでもある。